高市ショック

高市早苗氏が自民党総裁に選出され、日本で初めて第一党の女性総裁が誕生しました。素直に拍手を送りたいと思います。しかしその一方で、政治全体の右傾化を懸念する声も上がっています。
今回の総裁選では、当初は小泉進次郎氏が優勢と報じられていましたが、最終的には、高市氏が多くの都道府県で党員票のトップを獲得し、その勢いが国会議員票にも波及したとみられます。もっとも、この結果には予兆があった気がします。
直前の参院選では、昭和から続く既存政党が大きく議席を減らす一方で、国民民主党(+13)、参政党(+13)、日本維新の会(+1)、保守党(+2)など、新興保守勢力が合計で約30議席を伸ばして大飛躍をしました。これらの政党は、テレビや新聞といったオールドメディアに対し、SNSを駆使した情報発信で支持を広げたことが特徴ですが、最大の勝因は「庶民の共感」をつかんだことにあると思います。
「手取りを増やす」「年収の壁を広げる」「消費税を下げる」「インボイス廃止」といった、わかりやすく生活に直結するスローガンと街頭演説の巧みさで、「庶民の味方」という印象を浸透させるのに成功したからだと思います。
経済学者トーマス・ピケティは、高学歴化した現代社会の政治構造を「商人右翼(Merchant Right)」と「バラモン左翼(Brahmin Left)」という二つの潮流に分けて説明しています。バラモンとはインドのカースト制度における知識階層を指し、右派はマネーゲームと排外主義に傾倒し、左派はDEI(多様性・公平性・包摂性)など理念追求に偏る結果、どちらも庶民の生活感覚(現場感)から離れてしまっていると指摘しています。米国を例にとると、前者が共和党のトランプ、後者が民主党のサンダースです。
日本でも同様に、両者間の「政治の空白地帯(エアポケット)」を突いたのが、参院選での国民民主党や参政党の台頭だったといえるでしょう。
昭和の時代、日本の中道・左派政党は高投票率(約70%)を背景に、「庶民の味方」として厚い支持を得ていました。しかしその後、これらの政党はイデオロギー(平和憲法・戦争放棄など)への固執や、地球温暖化・DEIといったグローバルイシューに翻弄されて、「庶民の暮らしに寄り添う姿勢」を失ってきたように見えます。そして正直なところ、今の既存政党はどこも“賞味期限切れ”に見えます。
平成~令和にかけては、政治への関心が薄れ、投票率も50%台が当たり前になりました。
ただし最近は、参院選 前々回が48%、前回が52%、今回が58%と、無党派層の間でも政治への関心が再び高まってきています。
新興政党の支持層は、必ずしも過激なナショナリストや排外主義者ばかりというわけではなく、むしろ既存政党に不満を持つ庶民の受け皿になっている面があります。
一方で、自民党はいま少数与党の立場となり、他党との連立や協力を進めるのが難しい状況にあります。だからこそ今がチャンスです。
「高市ショック」をカンフル剤にして、中道・左派政党にはぜひ「庶民の暮らしに寄り添う政治」を取り戻し、党の在り方を立て直してほしいと思います。
以前にも触れましたが、日本人は討論(ディベート)があまり得意ではありません。その反動なのか、SNS上では過激で他人を攻撃するような投稿や、下品な誹謗中傷が目立つようになっています。
本来、日本人は「礼儀正しく、おもてなしの心を持つ民族」であり、それこそが世界に誇れる美徳のはずです。
だからこそ、どの政党であっても、SNS上でも対立を煽ったり、感情的な応酬をしたりするのではなく、冷静で紳士的、そして建設的な議論を重ねる姿勢が求められます。そうした態度を貫く党こそが、良識ある庶民の心をつかむことが出来る様にあって欲しいと願います。


